聖マリアンナ医科大学病院(以下当院)はダイヤモンド・プリンセス号が2月3日に横浜港へ停泊後、DMATを主とした院外活動に参加すると共に2月11日より新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の受け入れを開始した。これまでの経過を振り返り、当院の取り組みを紹介する。
診療システムの構築に至った流れ
患者受け入れに際して、救命病棟のICU3床とHCUの一部を巨大陰圧室に改装した。人工呼吸器やECMO管理が必要な重症患者を救命医が担当し、軽症から中等症患者を総合診療医と感染症医が担当した。当院は、COVID-19患者を受け入れる第2種感染症指定医療機関でなく、ダイヤモンド・プリンセス号の対応においては、重症者を主に受け入れる位置づけであった。東京都のPCR陽性者が100人/日を超え、3月25日に神奈川県から「神奈川モデル」が提示された。その主軸となる「検査・診断を行う医療機関」と「中等症を入院加療する重点医療機関」を担うべき医療機関に関しての具体的な対応策は提示されておらず、疑い症例も含めCOVID-19が確定した重症患者以外も多くの患者が当院を受診された。そのため、重症患者を受け入れる救命病棟のみならず、中等症を受け入れる病棟や発熱患者を受け入れる発熱外来を構築し対応することとなった。
ダイヤモンド・プリンセス号からの患者が退院後、日本国内での患者が増加したため各内科から一人ずつ2週間ごとのローテーションを組んで、合計4名-6名の内科COVIDチームが編成された。1病棟を救命病棟同様に陰圧室へ改装し、中等症患者と救命病棟から急性期を脱した患者の受け入れを開始した。また、近隣病院からの紹介や直接来院の発熱患者、当院の各科かかりつけ発熱患者を、夜間急患センターを発熱外来へ変更して対応にあたった。発熱外来には、総合診療医、感染症医を中心に、耳鼻科医や各診療科医師が協力し、診療にあたった。また日々増加するCOVID-19患者に対応するため、各部署から医師、看護師、理学療法士など多くのスタッフが救命病棟や内科COVID病棟のサポートに入った。精神神経科や健康管理部を中心に、現場で勤務するスタッフの心理的負担を取り除くようなサポートも行われた。上記のように、当院の全職員が協力してCOVID-19患者の診療にあたった。
システムの実際の枠組み( 図1 )
図.神奈川モデルにおける患者搬送の流れ
夜間急患センター
PCR検査
救命病棟
内科COVID病棟
近隣病院からの紹介患者や直接来院の発熱患者、各科かかりつけの発熱患者は一般外来と導線を分けるため発熱外来に誘導し、CT検査、PCR検査含めCOVID-19の評価を行った。入院の必要がある場合には、疑似症として内科病棟、重症患者であれば救命病棟へ入院となった。症状が改善した場合には、関連病院である川崎市立多摩病院を中心とした各病院へ転院となり、重症患者に特化した診療を継続した。また、近隣病院で重症化しそうな患者の当院への転院を積極的に受け入れた。PCR検査が陰性であった場合には、COVID-19の否定のための総合的な評価をおこなったのち、各病棟に転棟した。
うまくいっている点
2月7日に災害対策本部が設置され、救命センター長を中心として、現場の医師や看護師、事務職員など50名近い各部署の責任者が毎日web会議を行い(現在は隔日)、入院中の患者状況、各病院からの転院情報、マスクやガウン含めた物品の在庫状況などの情報共有を行っている。大学病院、法人全体としてまとまり、対応ができている。
改善を必要とする点
今後は、どこまでこの体制を維持していくべきか、国内の新規発生患者が少なくなった現在、発熱患者をどこまでCOVID-19の疑似症として考えるべきか、また来る第2波へ備えながらも日常診療の再開も必要な状況であり、日々検討が続けられている。
〈調査・掲載〉
「covid-19パンデミックに対応したプライマリ・ケア診療システムの集積」対策チーム